『夫のちんぽが入らない』読了 ~2017年読了本No.12
昨日、こだま氏著の『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)を読了した。一気読み。
こだま『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)読了。岸政彦さんの『断片的なものの社会学』以来の「頁をめくる手が止まらなかった本(ボン)」。人は、人生は、本当に様々だ。それでも明日はやって来て、私たちは生きて行く。
— 芦谷 佳介 (@ashyunya) 2017年2月5日
扶桑社公式特設サイト https://t.co/V11xviWyy4
読前の予想とは、だいぶ異なる内容だった。
いや、もちろん、タイトルから想像されるその「入らない」部分がメインなことには、間違いがない。
しかし、それだけではない。著者の人生は、自分にとっては非常に波乱万丈だ。事実は小説より奇なり。
いや、世の中には、もっともっと波乱万丈なエピソードなど沢山たくさんあるのだろう。現代の、この日本においても。
しかし、たとえそうだからと言って、本書で語られるこだま氏の人生が、「まぁ、そういうことって、あるよね」とカンタンに受け止められたり受け入れられたり、という内容であるとは、やはり全然思わない。
(そもそもが「入らない」話だし。)
…というように、本書を読んで、その感想は、なかなか「こうでした・こう思いました」とスパーーンとクリアカットに言うことが出来ない。
「入らなさ」に苦悶するのと同期している。
「入らない」だなんて、かわいそう。
いや、でも、二人の関係性が「幸せじゃない」とは全然言い切れない…
っていうかホントに「かわいそう」か?
これはこれで「幸せ」の「ひとつのかたち」なのではないかしら…
しかし「幸せ」と力強く評するのも、なんか全然違う気がする、躊躇われる……
(※上記は個人的感想の創作です)
…と、安直な感想・判断・批評で終わらせることが出来ない。
逆に言えば、多様な解釈、多様な感想に溢れることになるとも思う。
「夫の」が「入らない」のだから、別のヒト探せば? とか。
でも、それは「入る/入らない」のみに焦点を当てているからで、さらにそれは「入る」のが「幸せ」という非常に一面的な価値観を無条件に前提にしている(それがヒトにとって大事だ、ということもやっぱり重々承知はしているが)。
著者はそれに「No」と言っているのではないか。
いや、「No」とまで強く言ってはいないかもしれない。でも、「そうじゃないのも、あるよ」くらい、言っているように思う。控え目ではあるかもしれないけれど。
すんなりと(多少痛くても)「夫の」が「入る」人生であったら、と、私が言うまでもなく幾度となく思ってきたことだろう。でも、「入らない」という現実が、眼前(股前?)に、ある。
その現実を受け入れ(入ってないけど)、「別の人を探す」という方向ではなく、「それでも2人で共に生きていく」という選択をしたことに、重みを感じる。
この世界の片隅に、夫のちんぽが入らない夫婦も、いるのだ。
それはそれで、いいではないか。
全ての人に、その人(たち)なりの、人生があり、事情がある。
「幸せ」の在り方は、人それぞれでいいではないか。
それは本来「当たり前」な話なハズなんだけれど、現代の日本は非常に「常識」的とされる考え方がハバをきかせているように感じる。そこからハズれている人が非常に肩身の狭い、生きづらい人生を送っているように思う。
でも生きていかなきゃならないし、幸せになる権利だってある。
(…これも「幸せ」であることを「価値」としている価値観だけれど、私は、やっぱり人間は幸せの方がいい、と(少なくとも今のところ)思っている。)
本書は、そういう意味で「文化的雪かき」的側面も持っていると思う。
(こだま氏の「穴」は夫によって埋められないわけだけど。)
渋谷区の同性パートナーシップ条例があれだけのビッグニュースとして取り上げられるような国である。
多様性を暗黙のうちになかなか認めない社会において、本書は、少数の人たちにとってであるかも知れないけれど、その肩に積もっている重いおもい「雪」を、わずかばかりであっても払いのける効力があるように思う。
今後も、絶え間なく「雪」は降り続けるかもしれないし、時々理不尽な「暴風雪」にもあってしまうかも知れない。
でも、本書のような存在が、「入らない」夫妻の存在が、(一時かも知れないけれど)救いとなる人たちが、この世界の片隅には思ったよりもたくさんいるのではないだろうか。
もう一度言う。
全ての人に、その人(たち)なりの、人生があり、事情がある。
「幸せ」の在り方は、人それぞれでいいではないか。
それでは聴いて下さい、吉井和哉で、「人それぞれのマイウェイ」。(by「39108」)
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